WEB小説美術館・まほろば

WEB小説の紹介用。全てファンアートを贈った作品のみの展示になります。

WEB小説紹介 №018「久遠の夜凪に」 淡 湊世花さん

久遠の夜凪に

作者 淡 湊世花

kakuyomu.jp

 

少女が出逢ったのは、

500年の眠りから蘇った少年でした

 

あらすじ

漁師の娘であるカヤは、いつも人と馴染めず、細々と生きていた。唯一、カヤが心を許せるのは、タゴノ岬に500年も鎮座している石像の少年だけ。
ある日、仕事で家路が遅くなったカヤは、人攫いに襲われてしまう。カヤを助けたのは、あの石像の少年だった。
なぜ、彼はこの世に蘇ったのか。

カヤは、少年とともに、久遠の夜凪へ旅に出る……

 

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本文の一部を抜粋引用

一章

1話 生贄にされる者

 新月の空が、息をするように色づき始めた。まもなく夜が明けるのだ。

 海の底は、このときも闇の世界を留めたまま、刃かと思うほどに凍てついていた。魚はなく、貝は隠れ、寄せては返す波だけが、雄々しく鼓動していた。

 

 そこに、1人の女が、唇を青くしながら漁をしている。しかし、泳ぎは粗末で、もりを握る手は、漁など似つかぬ細さだ。皮膚の下には脂肪もなく、薄い胸元を笑うように、ふんどしだけがユラユラと踊っている。女は陸の者だった。

 

 冷たすぎる海の水が、女の肌を突き刺してゆく。波が荒々しい音を轟かせた。女は逃げるように息を吸い、膨らんだ肺を海中に沈めた。

 女は骨の髄まで凍えている。

 それでも、最後に潜った海の底に、女は求めていた獲物を見つけた。女の心臓が一気に膨れ上がり、溶岩のような血がドッと全身に走る気がした。

 一匹の魚が、海底の岩場に張り付くように泳いでいる。奇怪なことに、その魚には肩があった。

 

 女は慎重に、だが急いで、銛を動かした。ところが、切っ先は虚しく水を掻いただけ。奇妙な姿の魚は、すでに真逆の方角へ動いていた。

 女は諦めなかった。何度も何度も、同じことを繰り返し続けた。

 やがて、女は肺に激痛を感じた。心臓が悲鳴をあげていた。女は、臓器など潰れてしまえばいいと鞭打つが、体は勝手に水の上へと這い上がって行く。

 女が海面に飛び出した。真っ青な口で目一杯息を吸い込む。

 女が何度か息を吸ううちに、波が女を陸に追いやろうとしてきた。女は、させるものかと、必死に海に食らいつき、もう一度凍てつく海の中に潜ろうとした。

 そのときである。突然、女の背後から声がかけられた。

 

「あんた、夜通し海に潜っていたね」

 

 女は驚いて、背後の海面を振り返った。

 そこには、赤ん坊ほどの大きさの、ぐちゃぐちゃに皺の寄った、一匹の魚がいた。

 話しかけてきたのは、この魚だった。

 

「このまま続けると、あんた、死ぬよ」

 

 ただの醜い魚ではない。その魚には、人間の顔が付いていた。両側のヒレの部分に、2本の腕がニョッキリと生えている。しかし、胸から下は鈍色の鱗を持った、魚の体をしているのだ。

 

「貴女様は、人魚でございますか」

 

 女は、震えながら魚に問い返した。寒さによるだけではない。女は、目の前の人語を話す魚が、ものたぐいだと知っていたからだ。

 すると魚は、怯える女を面白がるように、ニタニタと笑いながら答えた。

 

 

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海を舞台にした人魚の物語( *´艸`)✨

人魚のフレーズで悲哀を想像してしまう。。。

出会いと別れ、どのような結末になるか是非ご覧くださいませ

 

kakuyomu.jp

 

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今回は全ての表紙画像を新調してみました╭( ・ㅂ・)و̑ グッ