WEB小説美術館・まほろば

WEB小説の紹介用。全てファンアートを贈った作品のみの展示になります。

WEB小説紹介 №027 「リコリスの彼岸」 水雲 悠さん

リコリスの彼岸

作者:水雲 悠
なろうにて

https://ncode.syosetu.com/n5075fk/

 

その記憶は、虚構か、幻想か

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 あらすじ(引用しております)

その記憶は、虚構か、幻想か。
魔法が存在しないはずの世界。千年の時を経て、人々は再び神秘を目にする。世界の姿が明らかになっていくなかで、ある少女が宿命に抗う物語。
誰も世界を救わない、一風変わったファンタジー

再読必至という、web小説らしくない小説を敢えて目指します。タイトルの意味を考えながら読んでみてください。
序盤であまり焦点を当てない重要人物が多数存在します。登場人物一覧をご覧ください。 

 

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本文の一部を引用

Prologue

 

 

 最初に忘れたのは、自分の姿だった。

 

 それでも、彼の姿を忘れることはない。そして、彼が呼んでくれた自分の名前も。

 

 私は覚えている。我が子たちを、愛した人々を、彼らと過ごした思い出を。忘れたのは、自分の姿だけだ。そしてその記憶は、哀傷に満ちている。

 

 

 

 誰か、此岸を彷徨い続ける私に、忘却の雨を降らせてはくれないか。

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一章の本文引用

息苦しさに、ミコトは目を覚ました。

 

 白い尾が、頬をくすぐる。白猫が胸の上にくるまっているのだ。

 

 起き上がり、すばやく身なりを整える。その間、白猫のシエロは、大人しく見守っていた。

 

 シエロを連れて部屋を出ると、父の部屋の前にヒナタが立っていた。

 

「おはようございます、お嬢様。朝早いんだな」

 

 彼は冷笑を浮かべて言った。お嬢様、というのは嫌味だ。

 

「おはようございます。起床時間ですか?」

「まあそうだ。お父上にご挨拶するかい?」

 

 ヒナタは父、アイザック・オリヴァーの友人であり、長年秘書を務めている。人々は彼を「アイザック・オリヴァーの影」と揶揄するが、ミコトはむしろ、黒衣だと考えていた。彼との付き合いも長いが、どうにもつかめない男なのだ。

 

 アイザックは、とある会社の経営者である。同族経営で、オリヴァー家は国内有数の資産家として知られているが、彼はその中でも、若くして首領を任される実力者というわけだ。

 

 資産家で端正な顔立ち、さらに寡夫ときているので、彼は自覚していないようだが、後妻を狙う女性は少なくない。しかし持ち前の鈍感さで、のらりくらりと躱しているようだ。そんな彼を、朴念仁と呼ぶ者もいる。

 

 当然、彼にも弱点はある。寝起きの悪さが、数少ない欠点のひとつだ。人並み以上に睡眠時間が必要な上に、就寝時間に関わらず、朝には滅法弱い。毎朝彼を起こすのは、ヒナタの仕事なのである。

 

「結構です。お先にどうぞ」

 

 

 

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目次

序章 此岸

一章 悲しい思い出

二章 想うはあなたひとり

幕間

三章 また逢う日を楽しみに

四章 追想

五章 葉見ず花見ず

終章 彼岸

 

 

なろうにて