WEB小説美術館・まほろば

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WEB小説紹介 №012 「星よきいてくれ」 陸一じゅんさん

星よ きいてくれ

作者 陸一 じゅん

皇子アルヴィン、

頭蓋骨を盗まれ【怪物】となりて。

kakuyomu.j

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あらすじ

この世界に勇者なんていない。

国と国とを隔てる雲海を、飛鯨船(ひげいせん)が征するようになって幾星霜。
かつて、この世は一つきりで、神々の戦争で二十に切り分けられたというけれど、神様の名前なんて、魔法使い以外はもう誰も覚えていやしない。
そんな神秘の魔法使いの国だって、鎖国を解いてからは留学がトレンド。
アトラス神を先祖にいただく皇子アルヴィンもまた、異母兄姉にコンプレックスを持つ『特別になりたい少年』でしかなくって、けして『選ばれしもの』ではなかったのだ。

ーーーそう、その日までは。
 

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重厚なハイファンタジー


多重海層世界。
世界を鳥瞰した学者たちは、列なる二十もの海と大地を、そう定義した。
魔女の予言が残った最下層、フェルヴィン皇国の末皇子アルヴィンは、優秀な異母兄姉の存在にコンプレックスを持つ14歳。
学も失敗して鬱屈とした日々を送っていたある日、謎の一団に城が占拠され、囚われの身になってしまう。さらには、分身である魔人『ミケ』の命と、自らの頭蓋骨を盗まれてしまった。
冥界に堕ちんとしたそのとき、預言に従い『星』の宿命を負って蘇ったが、しかしその肉体は、神の炎に焼かれていてーーー。

自らの頭蓋骨をもって、人類根絶の使徒として甦った憧れの英雄ジーン・アトラスに対峙するアルヴィンは、肉を焼く灼銅の鎧と、獣の咆哮をもって立ち向かう。
一方そのころ。
市井では、やけに肝の据わった魔法使いの若者が途方に暮れていた。

 

「魔法使いの国行きの飛鯨船がサァ……そこらへんの丘で低空飛行してねえかなぁ……」
「そんな都合のいいこと、あるわけないじゃん」

やがて魔法使いサリーは、なし崩しに、皇子奪還に命をかける羽目になって……。

海外の児童ファンタジーみたいな王道ヒロイックサーガを意識しています。『人間讃歌』と『その血の運命』って感じの異世界ファンタジーです。

 

 

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※以下超ロングあらすじ※(カクヨムより引用)

 むかーしむかし、あるところに。この世界には、たくさんの神さまがおりましたとさ。
 この世界の子供向けの神話は、だいたいこの文句から始まる。

 神さまの創った世界に、まだ人間がいなかったころ。神々の王デウスに『賢い新しい生き物を作りなさい』と言われた鍛冶の神は、泥と火と黄金と、いくつかの材料で、最初の人間を作り上げる。
 その新しい生き物は、黄金の不死の心臓を持っていて、『黄金(きん)の子』と呼ばれて、神々にとても可愛がられた。
 けれど教えることをどんどん覚えて賢くなっていく『黄金の子』を、面白く思わない神がひとり。
 叡智を司るその神は、予言もできる神でもあったので、人間がこの世を滅ぼすかもしれないと危惧したのだ。
 そこで鍛冶の神の炉から火を盗み、きれいな箱に入れて、黄金の子に差し出した。
 黄金の子は、まだ『火』を知らなかったから、「箱から透けて見えるこの綺麗な灯りはなんだろう? 」と、火に触れてしまったから、さあ大変! 

『黄金の子』は一瞬にして燃え上がり、けれど不死の身体で死ぬに死ねず、三日三晩苦しんだ末に、最期には自らを不死たらしめる『黄金の心臓』を取り上げてほしいと懇願した。
 彼を可愛がっていた神々は、とても悲しんで、『黄金の子』の躯の灰を鍛冶の神のもとに持ち込んで、もう一度人間を創ってほしいと頼むわけだけれど、次に生まれた『銀の子』は、生まれてすぐに大暴れ! 神々の庭から逃げ出してしまった!

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 なんせ『銀の子』は『黄金の子』の灰を加えて生まれたので、今際のきわの記憶をしっかり持っていた。
 産まれてはじめて騙され裏切られ、あげくに殺された『黄金の子』は、怒りと恐怖という感情を知ってしまっていたのだ。

 やがて『銀の子』は地上でそこそこ繁栄したけれど、それ以上に争いが絶えなかった。
 戦うことを覚えた彼らはそればかり。新しい道具をいくつも作り、獣を殺して、土地を耕した先から荒らしていくので、神々は『銀の子』も処分するはめになった。
 次に生まれた『銅の子』には、もう少し大人しくしてほしいと思った神々は、彼らに愛の女神たちを送り込んだ。
 女神たちはウキウキとはりきって、人間の世に『恋』を普及させることに成功する。
『銅の子』の一族は今まで以上に繁栄したけれど、今度はその『恋』が原因で、大きな争いが起きた。

 ひとりの女を奪い合い、多くの男が争って、さらにその戦いがいつしか利権や政治が絡み、美女は権力とくっついて勝者のトロフィーに祭り上げられて、神々すらその戦いに巻き込まれて……最後には、二つの国に分かれて血で血を洗う戦乱が美女が死んでしまった後も止まらず、百年も続いて、人類ははじめて自滅というかたちで全滅した。

 そうして、四度目の正直として生まれたのが、今の世代の『鉄の子』だ。
『鉄の子』は神々の尽力もあってスロースタートだった。
 なにせ、すっかり人間は厄ネタになっている。
 けれど『鉄の子』は、『黄金』『銀』『銅』の世代の過ちを経て、かなり賢くなっていた。つまり善悪の区別が最初からついていたのである。

 そのためかなり順調に繁栄していったし、彼らに魅力を感じて人間と夫婦になる神もいたりして、人と神はこれまでに無いほど長い時をともに過ごし、その境界を曖昧にしていったのだ。

 それがいけなかった。 

 

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 やがて人は、神々を甘く見るようになっていった。親しき中にも礼儀ありというけれど、人類はその『礼儀』を忘れてしまったのだ。
 目に余るのが、巨神アトラスの娘たちが収める大国アトランティスで、海洋国家として成功したこの国では長年続けてきた供物はけちるくせ、権力者は自己満足だけで誰も着れないほど重い服や冠、持ち上げられない剣、あげくに誰も住めない塔なんかを作ったりする。
 アトラスは再三娘たちを叱ったけれど、聞き入れない。
 そしてついに堪忍袋の緒が切れた神の王デウスは、大津波アトランティスを海に沈めてしまう。

 そこで怒ったのはアトラスだ。
 アトラスはアトランティス近海の海の所有者だったから、その海を使って娘たちも暮らす国を滅ぼしたことに大いに憤った。
 もともと、アトラスの一族とデウスの一族とは、親の代からの確執があったから、騒ぎに便乗した神々もいたのだろう。
 火種はやがて燃え上がり、神々を統べる王は誰かと問う大きな戦争になった。

 まずは人類をどうしても滅ぼしたい一部の神々によって、光を司る太陽や炎の神はまとめて監禁され、飢餓と疫病が蔓延した。
 次に、一続きだった海は大地ごと砕かれ、混沌の海で二十に分かたれる島となった。闇に包まれた世界の中、戦の残酷さは増していく。

 のちにこの戦禍を、世界創造の混沌になぞらえて、『混沌の夜』と人は呼んだ。

 さて、人類はといえば、多くの数を減らしたものの、学び、受け継いできた知恵で、生き残っている者たちがいた。
 扇動していたのは一人の賢女。偉大なるその賢女は、魔法に長けた魔女であった。
 魔女は知恵と魔法でたったひとり神々に挑み、次々と協力者を得ていく。その中には、人類を創った鍛冶神や、アトラスの姿もあった。
 鍛冶神は、自らの炉から消えた火を求め、アトラスは戦禍の火種となったことに心傷めていた。
 彼らの尽力もあって、魔女は炎や太陽の開放に成功する。

 光に照らし出された世界は、散々なものだった。魔と病と死が我が物顔で蔓延り、命という命が滅びていた。
 戦士たちは驚き、その行いを恥じ、魔女の主張に耳を傾けた。
 魔女は、「やがて人々は神の名を忘れることでしょう」と予言した。
 いきり立つ戦乱の神々に、魔女はひとつの契約をもちかける。 

 

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「もしその時が来たとき、神々の皆々様には、人類がこの世に必要かどうか、再びの審判をお願い申し上げます」

 のちに人々へ魔女が語った契約の内容とは、いわく以下のとおり。

 ――――人々が神々の名を忘れたとき、神々は人類の真価を試すこととする。
 ――――そのとき、人類には二十二の勇者があらわれると、わたしと予言の神は予言した。
 ――――勇者とは、世界を変える素質あるもの。さだめられた選ばれしもの。


 一のさだめは愚者《フール》。やがて真実を知るさだめ。
 二のさだめは魔術師《マジシャン》。種をまいた流れ者。
 三のさだめは女教皇《ハイプリエステス》。始まりの女。
 四のさだめは女帝《エンプレス》。あらゆる愛の母たれや。
 五のさだめは我らが皇帝《エンペラー》。秩序の守護者。
 六のさだめは教皇《ヒエロファント》。知恵を授かりしもの。
 七のさだめは|恋人たち《ラバーズ》。自由なる苦悩の奴隷。
 八のさだめは戦車《チャリオッツ》。闘争に乾いたもの。
 九のさだめは力《ストロンジ》。力制すもの。
 十のさだめは隠者《ハーミット》。愚者がやがて至るもの。
 十一のさだめは|運命の輪《ホイール オブ フォーチュン》。予言に逆らいしもの。
 十二のさだめは正義《ジャスティス》。秤の重きは全の重き。正義の剣は全のために。
 十三のさだめは|吊るされた男《ハングドマン》。真実に殉じるもの。
 十四のさだめは死神《デス》。再生の前の破壊。破壊の前の再生。
 十五のさだめは節制《テンパランス》。意思なき調整者。
 十六のさだめは悪魔《デビル》。恐れるは死よりも孤独。誘惑を知り、操るもの。
 十七のさだめは塔《タワー》。巡り合わせた罰。楽園からの転落。
 十八のさだめは星《スター》。希望の予言。賢人の道しるべ。
 十九のさだめは月《ムーン》。透明な狂気のヴェール。魔女の後継者。
 二十のさだめは太陽《サン》。祝福された命。
 二十一のさだめは審判《ジャッジメント》。神の代官。審判の具現化。
 二十二のさだめは宇宙《ワールド》。あらゆるものの根源にして、全《まった》きが至るもの。

 

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 魔女は言ったことだろう。
 白い顔に晴天の青い瞳を輝かせ、腕を広げて笑いながら、彼女はよく通る大きな声で言ったはずだ。

「天を目指しなさい! 海の外、雲海よりもずっと向こうの空の先。天上の果てに未来がある! 」

 さて、それから三千五百年の時が経った。
 神々は戦禍で荒廃した世界を去り、人々はほんとうに、神の名前を忘れつつある。
 世界は二十に分かれたまま。数珠つなぎに、雲海を隔てて縦に並んでいる。つまり『世界』と『世界』の間には、海と雲海があり、大地と雲海のあいだに空があって、海の底には次の世界の雲海が広がっている。

 さいきんの難しい学者先生の言葉では、『多重海層世界』というのが、この世界の呼び名だそうだ。

 三千五百年の執行猶予は終わった。

 

 ここに、人類存亡を賭けた『最後の審判』が始まる。

 

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「なろう」にも掲載しています✨

kakuyomu.jp

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***

 

 

 

 

《星よきいてくれ第二シーズン》

魔女が咲く 

 

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空を見た時から、

ずっと飛んでみたかったの!

 

あらすじ引用

魔女エリカは、最果ての世界からやってきた少女であった。
痛みと苦難と恐怖を乗り越えて、文字通り世界を変えた女はうそぶく。
「最後の舞台を整えましょう」

多重海層世界。
世界を鳥瞰した学者たちは、列なる二十もの海と大地を、そう定義した。

国と国とを隔てる雲海を、飛鯨船(ひげいせん)が征するようになって幾星霜。
かつて、この世は一つきりで、神々の戦争で二十に切り分けられたというけれど、神様の名前なんて、魔法使い以外はもう誰も覚えていやしない。
そんな神秘の魔法使いの国だって、鎖国を解いてからは留学がトレンド。
アトラス神を先祖にいただく皇子アルヴィンもまた、異母兄姉にコンプレックスを持つ『特別になりたい少年』でしかなくって、けして『選ばれしもの』ではなかったのだ。

ーーーそう、その日までは

 

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三千五百年の時を越え、人類存亡最後のチャンスである【最後の審判】が始まった。
最下層フェルヴィン皇国での、【魔術師】一派の妨害を受けながらも【石の試練】が終結し、一行は、次なる舞台である第18海層を目指す――――!
第18海層ケムダにある島国【(通称)魔法使いの国】。そこは下層で最も発展した技術大国。
魔法使いサリヴァンは、相棒ジジ、幼馴染のヒースとともに、久しぶりの故郷の土を踏む。
しかしそこでは、国王・エドワルドによる姦計が張り巡らされていた――――!!!

 

あらすじ引用ここまで

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全登場人物リスト より参照


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✡エリカ・アイリーン・クロックフォード【?】

 歴史に隠れた『もう一人の始祖の魔女』。

 混沌の夜を、不老不死になることで乗り切った。三千五百年の時を越え、今もなお存命の人物。

 聞いたことのある名前をしているが……

 

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二部本編冒頭

プロローグ【Unknown=Scroll】

 

 ドッ、ドッ、ドッ、と、うつぶせになった体に、音が響いていた。

 エリカには、それが砂埃の積もった床から響く音か自分の心臓の音かの区別がつかない。気絶していた動揺を忘れるためには、前者だと思うことにした。

 口の中で血の味がする。痛む部位とその状態もすでに把握してある。それらは優先度を落として頭の隅に置き、背中に覆いかぶせるように負った人物の体温と、かすかな吐息を確認することに集中した。

 耳の後ろで吐かれる息は、か細いそよ風のようだった。染み着いてしまった鉄臭いにおいが、エリカのうなじと首の境目に押し付けられた黒髪から漂い、力なく弛緩しかんした腕か垂れ下がっている。

 女にしては背が高く、それなりに鍛えているエリカより、彼女の体は頭半分ほども小柄であった。しかし、女は物理的に二人分の体重を抱えている身だ。今は、エリカにも彼女の膨れた腹を気遣う余裕もなく、ただ共に逃げることしかできなかった。

 落ちた荷物を引き寄せる。中に入っているのは、水のボトルが三本。アンプルがいくつか。『本』が一冊。こぶし大の瓶が二つ。消毒液一瓶。毛布が一枚。持ち出せたのは、これだけだった。

 頭の上で明滅を繰り返す赤い警戒色。廊下の先、その鉄扉のさらに奥でしているサイレンの残響も、ともにエリカの集中を乱す。

 

 いつまでも床に寝ているわけにはいかない。

 壁を使い、なんとか身を起こす。抱え込んだ手足は、折れそうにか細い。

 廊下はゆるやかに上り坂を描き、点々と、緑色の常夜灯と、赤い警戒灯が、頭の上と足の下に灯っていた。

 

 力をこめたときについに奥歯が少し欠けたので、金臭い唾とともにペッと吐き出す。

 ぬぐった血が、禿げた口紅のように伸びて、糸を引く。

 

 一歩。また一歩。

 自分はまだ歩けるのだと分かれば、何の問題も無い。

 エリカは腹に力をこめて駆けだした。脇腹の奥の痛みも、砕けた右肩の関節が振動で削れていく音も、下腹の不穏な鈍痛も、発熱も、把握はしていてもどうでもいい。

 

 女だからではなく、一人の人間だからでもなく、一つの命として、どんな理由も忘れて走るのだ。

 先へ、先へ。

 深く。長く。

 

 生きるのだ。

 どこまでも。

 どこまでも。

 

……ああ、どうしてこうなったのかしら―――――

 

 目の奥が痺れている。遠く、記憶の中で男が言う。

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それとこちら表紙画像を新調しました✨

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