WEB小説美術館・まほろば

WEB小説の紹介用。全てファンアートを贈った作品のみの展示になります。

WEB小説紹介№056「老人と蝶」平崎芥郎さん

老人と蝶

作者:平崎芥郎

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老人がした、一つの優しさの物語

 

あらすじ引用

純粋な美しさや優しさをテーマに描きました。

kakuyomu.jp

 

ジャンル/詩・童話・その他

タグ/短編小説 純文学

 

老人の優しさに泣ける:☆☆☆☆

いろんな世界を見に行こう:☆☆☆☆

ちょっとした日常にある気づき:☆☆☆☆

 

とある作家さんと蝶の物語。3000文字未満で紡がれるお話です(੭ु ›ω‹ )੭ु⁾⁾♡

サクッと読める短編。

疲れた時とか、ちょっと一休みするときにおすすめの作品です。

 

本文引用

老人と蝶

 自室には大量の原稿と本が積み重なっている。その真ん中に、老人が机に両手を放り出した状態で眠っている。  

 しばらくすると、老人は目を覚ました。

 「う……あ、あぁ……眠ってしまったか……。」  

 左右にはご存知の通り「山」が広がる。目の前には書きかけの原稿があり、半分過ぎたところで万年筆のインクが下へ一直線に流れ、それは老人の方へと続いている。  

 「なんてことだ!あぁ……」  

 老人は後悔する。その様子は最寄駅を寝過ごしたような反応だ。  

 「なぜわしは寝てしまったのだろうなぁ……歳のせいかのぉ……」  

 すると、一本の電話が鳴る。  

 「おぉ!なんだなんだぁ」  

 慌てながらも心を落ち着け、電話に出た。

 「はい……吉川です」  

 『あ、吉川さん?新作執筆終わりました?今日で締切日ですよ?』  

 「……え」  

 老人は書きかけの原稿の先にあるカレンダーを見つめるが、老眼のせいかなかなか焦点が定まらず、諦めて老眼鏡をかける。  

 「あぁ……わしは二日も眠ってしまったというのか……」  

 『え!?寝てたんですか!?吉川さん……もうこれ以上は待てないですよ……?本来の締切日から二週間も経っているんですから……僕もね、編集長から他の担当になるよう命じられたんです。でも、吉川さんがまた前のように面白い作品を書いてくれることを信じて、その命令を断ってるんですよ……。しっかりしてください……』  

 「あぁ……申し訳ない……はい…………はい……とりあえず、あと三日で終わらせますから……はい……申し訳ない……はい、はいぃ……」  

 電話を切る。  

 「はぁ……いつからこれほどまでに書けなくなってしまったのか……」  

 

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